調剤薬局・ドラッグストアの市場規模と最新動向

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調剤薬局・ドラッグストアの市場規模と最新動向

1. 調剤薬局の市場規模

調剤薬局は年々増加しており、調剤併設ドラッグストアと合わせると、コンビニエンスストアの数よりも多いと言われています。調剤薬局においては、病院の近隣にある「門前薬局」が主流でしたが、近年では患者さんが利用しやすい住宅地や駅などに店舗を構える「面対応薬局」も増えています。

令和3年度の調剤医療費(電算処理分)は7兆7,059億円で、前年度比+2.8%となっています。処方箋1枚当たりの調剤医療費は9,648円で、前年度比▲2.0%です。

現在、調剤薬局は飽和状態にあり、今後市場規模が大きく拡大するとは考えにくい状況です。今後生き残るためには、時代に応じた柔軟な対応を行う必要があります。

(出典:厚生労働省「令和3年度 調剤医療費(電算処理分)の動向」

2. ドラッグストアの市場規模

一般社団法人日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)は、令和5年3月に「第23回(令和4年度)日本のドラッグストア実態調査(結果速報)」を発表しました。この調査によると、ドラッグストア業界の売上高は8兆7134億円、前年度比102.0%となっています。令和4年度は前年度比106.3%だったため、伸び率は下回る結果となりました。

また、ドラッグストアの全体店舗数は2万2084店舗で、前年度から359店舗増加しています。日本チェーンドラッグストア協会は、2025年に10兆円産業化を目標として掲げていますが、差別化が難しく頭打ちとなっている状況であることは否めません。

3. 調剤薬局・ドラッグストアが知っておきたい最新動向

調剤薬局・ドラッグストアともに、生き残るためには時代に応じた施策を練ることが大切です。薬局業界を取り巻く状況を把握し、今後の戦略に活かしましょう。

3-1. 地方郊外における薬剤師不足の深刻化

近年では、郊外や地方、離島といった都心部以外における薬剤師不足が深刻化しています。以下の画像は、令和2年度において、薬局・医療施設に従事する「人口10万人あたりの薬剤師数」を都道府県別にまとめた表です。

(出典:厚生労働省「令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」/https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/20/dl/R02_kekka-3.pdf

上図を見ると、沖縄県・福井県・青森県などの地方において、薬剤師数が不足傾向にあることがわかります。こういった地方や過疎地では高齢者が増加しているため、薬剤師不足が深刻な課題です。

一方で、東京都・神奈川県・大阪府といった主要都市では、薬剤師が充足している傾向にあります。ただし、同じ都道府県であっても、中心部と郊外では薬剤師の充足率が異なる点に注意が必要です。郊外や医療過疎地ほど、薬剤師不足に悩む薬局は多くなります。

3-2. 調剤報酬改定による対人業務へのシフト

令和4年調剤報酬改定は、対物業務から対人業務への転換を強く推進する内容となりました。対物業務の点数は実質的な引き下げとなっており、対人業務へシフトできなければ薬局経営は厳しいものとなるでしょう。

薬局の主な対人業務

  • 処方内容の確認・処方提案
  • 継続的な服薬指導と服薬状況の把握
  • 処方医へのフィードバック
  • 在宅訪問での薬学的管理
  • 調剤後のフォローアップ

対物業務では「薬の受け渡し」がメインでしたが、対物業務では「薬の受け渡しから服薬後までの継続的なサポート」を行います。患者さん一人ひとりと深いコミュニケーションを取り、信頼関係を築くことも求められます。

対人業務への移行を後押しする施策として、「地域連携薬局」「専門医療機関連携薬局」の認定制度も整えられました。地域でどのような役割を果たしたいのかを考え、薬局の方針を固めることも大切です。

3-3. 在宅医療・在宅訪問の需要増大

今後は高齢者の増加に伴い、在宅での療養を希望する患者さんがますます増えると予想されます。財政面においても、自宅療養が可能な患者さんが在宅医療に移行することで医療費の削減が期待できるため、在宅医療を推進する施策は続くでしょう。

薬局の在宅医療参入には、次のようなメリットがあります。

  • 患者さんにきめ細かな服薬指導が行える
  • 残薬管理・処方提案などによって適切な薬物療法が行える
  • 医師や介護士の負担を分散できる

「患者のための薬局ビジョン」において、厚生労働省は2025年までにすべての薬局をかかりつけ薬局にすることを目標として掲げています。かかりつけ薬局となるためには在宅対応・24時間対応が必須であることからも、在宅医療への進出は避けて通れないものとなるでしょう。

3-4. オンライン服薬指導の導入

オンライン服薬指導とは、パソコンやスマートフォンを利用して、ビデオ通話により服薬指導を行うことをいいます。令和4年4月の改正省令によって多くの規制・規則が緩和され、オンライン服薬指導はより便利に利用できるようになりました。

オンライン服薬指導によるメリット

  • 患者さんの移動時間や待ち時間を削減できる
  • 外出による感染リスクを軽減できる
  • 薬剤師のリモートワークが実現する
  • 薬剤師の在宅訪問の負担を軽減できる

オンライン服薬指導では時間的な負担が軽減できるため、高齢者だけでなく、多忙な子育て世代や勤労世代にとっても便利なサービスです。医療過疎地にある薬局や、地域住民からのニーズが見込まれる薬局は、積極的にオンライン服薬指導を導入すべきでしょう。

 

4. 調剤薬局が生き残るためにすべきこと

ここまで、調剤薬局・ドラッグストアを取り巻く環境や、調剤薬局のトレンドをお伝えしました。それらを踏まえて、調剤薬局が生き残るために取り組むべき施策を解説します。

4-1. 健康サポート薬局や機能別薬局の認定取得をめざす

患者さんが自分に合った薬局を選べるように、特定の機能を持つ薬局には認定制度が設けられています。認定薬局となれば、薬局としての強みをわかりやすくアピールできるので、より患者さんに選んでもらいやすくなります。

健康サポート薬局

かかりつけ機能に加えて、市販薬や食事、介護など、健康に関することを気軽に相談できる薬局



認定薬局

地域連携薬局

かかりつけ機能に加えて、他職種と連携体制を構築し、患者さんの在宅医療をサポートする薬局

専門医療機関連携薬局

がん等の専門的な薬学管理や、特殊調剤に対応できる薬局

今後は在宅患者さんの増加に伴い、「自分に合った薬局にかかりたい」と希望する人も増えるでしょう。認定薬局かどうかは、患者さんが薬局を選ぶ基準のひとつとなります。

薬局認定制度は対人業務の推進にあたって国が打ち出した施策であるため、認定薬局には調剤報酬の面でも有利となります。まずはかかりつけ薬局となることが第一の目標ですが、さらなる機能の拡充をめざして、認定制度の取得をめざしましょう。

4-2. 薬局DXを促進する

薬剤師が対人業務に集中できるよう、薬局DXを進めて業務効率化を図ることも重要です。薬局DXとは、ITツールやデジタル技術を活用し、薬剤師の業務プロセスや働き方を変革することを言います。

薬局におけるIT化・デジタル化の例

  • オンライン服薬指導の実施
  • 電子処方箋の活用
  • データのクラウド管理
  • 報告書作成システムや電子薬歴の導入

特に、在宅訪問の業務効率化に悩む個人薬局・小規模薬局は、積極的にITツールの導入やオンライン化に取り組むべきでしょう。ITツールを活用すれば、限られた薬剤師の人数で、効率よく在宅訪問軒数を増やすことが可能です。薬剤師間・多職種間における情報共有もスムーズになり、在宅医療の質向上が期待できます。

厚生労働省は、オンライン服薬指導や電子処方箋といったICT活用も促しています。オンライン服薬指導を導入すれば、リモート薬剤師を採用できるため、郊外における薬剤師不足の解消にも役立つでしょう。また、調剤報酬改定によるオンライン服薬指導の評価拡充も外せないポイントです。

薬局DXにあたっては、通信環境の整備、薬剤師のICTスキル向上、セキュリティ対策なども必要となります。患者さんが安心して利用できるように、薬局内でしっかりと運用方針や教育体制を整えることが大切です。

4-3. 薬剤師のスキルアップを図る

対人業務の質は、薬剤師の専門性やコミュニケーション能力に左右されます。薬剤師には豊富な知識と経験、そして患者さんに思いやりを持って接する姿勢が必要です。

特に在宅医療では、患者さんやご家族、医師、訪問看護師、ケアマネジャーなど、さまざまな人々と関わるので、薬剤師には高いコミュニケーション能力が求められます。患者さんには「寄り添った対応」が求められますし、医師との情報連携では「要点をわかりやすく伝える力」が必要です。また、患者さんの変化に気づいたり、質問に応じたりするための、専門的な薬学知識も欠かせません。

薬局では対人業務の教育研修体制を整え、薬剤師のテクニカルスキル・コミュニケーションスキルの向上を図りましょう。まだ薬局内にノウハウがない場合は、外部の薬剤師育成研修を利用する手もあります。

4-4. 地域密着型の経営戦略を練る

薬局が生き残るためには、地域住民に求められる存在となることが重要です。そのためにも、地域密着型の薬局経営をめざしましょう。

地域密着型薬局の施策例

  • 健康相談イベント・健康フェアの開催
  • 地域ニーズに応じた店舗づくり
  • 女性の健康サポート
  • 子ども・学生向け職場体験の実施

上記のような地域の健康促進をサポートする活動は、「地域連携薬局」や「健康サポート薬局」での取り組みにもつながります。高齢者が多い、子育て世帯が多いなど、地域の特色によって求められるサポートも異なるので、ニーズを正しく汲み取ることも大切です。

また、地域住民一人ひとりとコミュニケーションを深めることも重要です。「処方箋がなくても気軽に訪ねられる薬局」をめざし、患者さんに喜ばれる薬局づくりに取り組みましょう。

4-5. 地域の医療施設や関連施設との連携を強化する

薬局の在宅医療推進が求められる中、欠かせないのが地域の医療施設・関連施設との連携体制構築です。医療機関では「どの薬局が在宅訪問に対応しているのかわからない」というケースも多いため、薬局側から積極的なアピールによって理解を深めてもらう必要があります。

  • 医療機関や地域包括支援センターなどへの営業活動
  • 多職種連携会議・地域ケア会議への参加
  • ITツール導入によるリアルタイムな連携体制の構築
  • 在宅訪問・無菌製剤など医療サービスの強化

医師との信頼関係を築くためにも、患者さんや医療機関が求める医療サービスを提供しましょう。在宅訪問や無菌製剤に対応できれば、医療機関との関係も深まります。また、処方提案やフィードバックによる、こまめな情報連携を維持することも重要です。

他職種においては、まだ薬剤師の役割を正しく理解されていないケースも珍しくありません。今後は、薬局・薬剤師が主体となり、在宅医療や地域包括ケアにおける自分たちの役割を伝えていくことが大切です。

まとめ

調剤薬局・ドラッグストアは飽和状態にあり、大手チェーン薬局によるM&Aの事例も増えています。薬局が生き残るためには、地域のニーズに応じた患者本位の経営を進めていくことが大切です。

  • 認定薬局・健康サポート薬局の取得
  • ICT活用による薬局DXの推進
  • 薬剤師のスキルアップ
  • 地域連携型薬局としての取り組み
  • 地域の医療施設との連携強化

上記の取り組みを通して薬局の強みや独自性を確立し、地域住民にとって利用しやすい薬局をめざしましょう。

HYUGA PRIMARY CARE(株)の在宅支援サービス「KIRARI PRIMEサービス」では、きらり薬局が培ってきたノウハウを活かし、薬局の在宅訪問や経営のお悩みをサポートしています。薬剤師育成や在宅対応などに課題を感じている方は、ぜひ「KIRARI PRIMEサービス」にご相談ください。

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監修薬剤師:原 敦子
HYUGA PRIMARY CARE株式会社
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