在宅薬局経営で利益を上げるために必要な施策とは? 調剤報酬加算促進、デジタル化、時間外ニーズ対応…
外来から在宅薬局へと移行し、「何となく」在宅業務を進めていないでしょうか? 在宅には、在宅に適した体...
KIRARI PRIME(きらりプライム)
薬局経営を左右するのが、調剤報酬加算です。調剤報酬加算の算定によって、薬局の利益も大きく変わります。近年では、調剤報酬改定によって対人業務の加算が拡充している点も見逃せません。
本記事では、薬局経営者向けに、薬剤師が知っておくべき調剤報酬加算について紹介します。
目次調剤報酬点数とは、厚生労働省が定めた、薬局の機能や役割を評価するものです。患者さんに発行する処方箋には、要件を満たした場合に調剤報酬点数が加算されます。
調剤報酬点数は、「1点=10円」で計算します。調剤報酬は、加算するルールが決まっているため、同じ条件で医療を受けた場合は、全国どこでも同じ料金になることが特徴です。
調剤薬局の調剤報酬点数には、処方箋の内容を入力するだけで自動的に加算が取れるもの、薬剤師の介入によって算定できるようになるものなど、さまざまな種類があります。
調剤報酬は、「調剤技術料」「薬学管理料」「薬材料」「特定保険医療材料料」の4つで構成されています。
調剤報酬の構成
調剤技術料 |
・調剤基本料 ・調剤料 |
薬局の機能やサービスに対する評価(料金) |
薬学管理料 |
・薬剤服用歴管理指導料 ・かかりつけ薬剤師指導料 ・服薬情報等提供料 など |
薬歴の記録・管理、情報提供など、薬剤師の対人業務に関わる評価(料金) |
薬材料 |
「薬価」に基づいた、薬そのものの価格 |
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特定保険医療材料料 |
在宅で使用する医療材料のうち、保険請求できるものの価格 |
薬材料と特定保険医療材料は、国によって公正価格が定められているため、薬局によって価格が変動することはありません。しかし、「技術料」と言われる調剤技術料と薬学管理料は、薬局の施設体制やサービスによって、点数が加算できる仕組みとなっています。
調剤技術料と薬学管理料には、さまざまな加算があります。それぞれの加算の算定要件を把握した上で、確実に加算を取っていくことが重要です。
「患者のための薬局ビジョン」では、今後の薬局に求める施策が具体的に明示されています。ここでは、「患者のための薬局ビジョン」の中でも、とくに重要な6つの機能について見ていきましょう。
「外来服薬支援料2」とは、内服薬の一包化に合わせて、患者さんに必要な服薬指導・服薬管理を行った際に算定できる加算です。これまで調剤技術料に区分されていた「一包化加算」が、調剤報酬改定に伴い、薬学管理料の「外来服薬支援料2」として新設されました。
「外来服薬支援料2」の算定要件
一包化の必要性がある患者さんに対して、処方医から了解を得た上で、2剤以上の内服薬または1剤で3種類以上の内服薬の服用時点ごとの一包化及び必要な服薬指導・服薬管理を実施した場合に、内服薬の投与日数に応じて以下の点数を算定する。
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外来服薬支援料2は、多種類の薬剤を投与されている患者さん、またはPTPシートから薬剤を取り出すことが困難な患者さんに対して行います。介護施設から一包化を依頼されて、服薬指導を行わずに処方した場合などは、算定することはできません。
一包化の条件として、「2剤以上の内服薬」または「1剤で3種類以上の内服薬」と定められています。「1剤」とは、服用時点の数を指します。
具体的に、外来服薬支援料2の算定について、処方例を比較してみましょう。
[処方例] Rp1:A錠 朝食後 28日分 Rp2:B錠 毎食後 28日分 C錠 毎食後 28日分 |
[解説] 朝食後:A錠・B錠・C錠 昼食後:B錠・C錠 夕食後:B錠・C錠 服用時点が異なる2種類の飲み方で処方されているので、外来服薬支援料2の加算が可能です。 |
[処方例] Rp1:A錠(10mg) 朝食後 28日分 Rp2:A錠(20mg) 夕食後 28日分 Rp3:B錠 朝夕食後 28日分 |
[解説] 朝食後:A錠(10mg)・B錠 夕食後:A錠(20mg)・B錠 A錠の規格違いで用法が異なる処方例です。同一薬剤の規格違いは1種類とみなすので、この場合は1剤2種類となり、外来服薬支援料2は算定できません。 |
なお、外来服薬支援料2を算定した範囲の薬剤については、後述する「自家製剤加算」と「計量混合調剤加算」を算定することはできません。
「自家製剤加算」とは、市販医薬品の剤形では対応できない場合に、医師の指示に基づいて、調剤上の特殊な技術工夫を行った場合に算定できる加算です。ここでいう「調剤上の特殊な技術工夫」とは、以下を指します。
たとえば子どもの場合、剤形が錠剤しかないにも関わらず、錠剤の服用が難しいケースも多いでしょう。このような場合、錠剤を粉砕して粉薬にしたときに、自家製剤加算が算定できます。
自家製剤加算は、1調剤ごとに算定が可能です。1調剤とは、服用方法と日数が同じものを指します。毎食後と頓服の薬が処方されていた場合は、2調剤となります。
自家製剤加算の点数
内用薬 |
内服薬:錠剤(*1)、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、エキス剤 |
20点(*2) |
頓服薬:錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、エキス剤 |
90点 |
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液剤 |
45点 |
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外用薬 |
錠剤、トローチ剤、軟・硬膏剤、パップ剤、リニメント剤、坐剤 |
90点 |
点眼剤、点鼻・点耳剤、浣腸剤 |
75点 |
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液剤 |
45点 |
(*1)錠剤を分割した場合は20/100に相当する点数
(*2)7日またはその端数を増すごと
「時間外等加算」は、基本的に薬局の開局時間外に調剤した場合に算定できる加算です。時間外等加算には、時間外加算・休日加算・深夜加算の3つがあります。
時間外等加算の算定要件
算定要件 |
点数 |
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時間外加算 |
薬局で定めている営業時間外に調剤した際に算定可能 |
基礎額の100% |
休日加算 |
日曜日、祝日、12月29~31日、1月1~3日に調剤した際に算定可能 |
基礎額の140% |
深夜加算 |
22時から6時の間に調剤をしたときに算定可能 |
基礎額の200% |
時間外等加算は、重複して取ることはできません。基本的に深夜加算を優先するため、休日の22時から6時の間に患者さんが来局した場合は、休日加算ではなく深夜加算を算定します。
時間外等加算と似ているものに、「夜間・休日等加算」があります。夜間・休日等加算は、薬局の開局時間内において、特定の時間帯に算定できる加算です。
「夜間・休日等加算」の算定要件
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時間外等加算と夜間・休日等加算は、重複して算定することはできません。基本的には、開局時間外に算定できるのが時間外等加算、開局時間内に算定できるのが夜間・休日等加算と覚えておくとよいでしょう。
「計量混合調剤加算」とは、2種類以上の薬剤を計量・混合し、内服薬・屯服薬・外用薬を調剤した際に算定できる加算です。
「計量混合調剤加算」の点数(1調剤につき)
剤形 |
点数 |
予製剤 (20/100) |
液剤 |
35点 |
7点 |
散剤、顆粒剤 |
45点 |
9点 |
軟・硬膏剤 |
80点 |
16点 |
計量混合調剤加算は、投薬量や投薬日数に関係なく、「計量して混合する」という行為に対し、1調剤ごとに算定できます。ドライシロップ剤を液剤と混合した場合も、計量混合調剤加算を算定します。
計量混合調剤加算では、混合による安全性や効能の変化を判断するための、薬剤師の専門的な知識が必要です。
具体的に、計量混合調剤加算の算定について、処方例を確認しましょう。
[処方例] Rp1:A軟膏 1日1回 15g Rp2:B軟膏 1日1回 25g (混合指示) |
[解説] 薬剤師が軟膏をミックスさせることで、軟膏の計量混合調剤加算(80点)を算定できます。 |
[処方例] Rp1:A軟膏 1日1回 15g Rp2:B軟膏 1日1回 25g (かゆいところ) |
[解説] A軟膏とB軟膏は混合できないため、計量混合調剤加算は算定できません。 |
「重複投薬・相互作用等防止加算」とは、残薬の調整や相互作用を回避する目的で医師に疑義照会を行い、処方の変更が行われた際に算定できる加算です。疑義照会しても、処方が変更されなかった場合は算定できません。
多くの調剤報酬加算は処方内容に基づいて算定しますが、重複投薬・相互作用等防止加算は、薬剤師の積極的な介入により算定できるのが大きな特徴です。薬剤師の対人業務を評価する加算だと言えます。
「重複投薬・相互作用等防止加算」の点数
在宅訪問では、患者さんの自宅に多数の残薬が見つかるケースも多々あります。服薬指導を行う中で患者さんの残薬に気が付いた場合は、積極的に疑義照会を行い、重複投薬・相互作用等防止加算を算定できるようにしましょう。
「吸入薬指導加算」は、要件を満たした上で、患者さんに吸入薬の指導を行った場合に算定できる加算です。薬局の対人業務評価拡充のために、2020年度調剤報酬改定より新設されました。
「吸入薬指導加算」の算定要件
吸入薬の投薬が行われている喘息または慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者さんに対し、以下の(ア)(イ)のどちらかに該当する場合、患者の同意を得た上で、文書と練習用吸入器等を用いて吸入手技の指導を行うこと。 (ア)医師からの求めがあった場合 また、吸入指導の結果は、医療機関に対し文書による情報提供を行うこと。 |
3月に1回まで:30点 |
吸入主義の指導は、日本アレルギー学会の「アレルギー総合ガイドライン」等を参照して行います。患者さんに提供した情報は、薬歴に添付または記載します。
吸入薬指導加算を算定できるのは、3ヵ月に1度です。算定できない期間に指導を行う場合は、服薬情報提供料で対応するとよいでしょう。
「特定薬剤管理指導加算」には、1と2があります。
「特定薬剤管理指導加算1」の算定要件
特定薬剤管理指導加算1 |
ハイリスク薬について、患者さんの服薬状況を把握した上で、必要な薬学的管理及び服薬指導を行った場合に算定する。 ハイリスク薬が複数処方されている場合は、すべてについて服薬管理・指導を行い、要点を薬歴に記載する。 |
10点 (1回につき) |
特定薬剤管理指導加算1は、通称ハイリスク薬加算とも呼ばれます。算定対象となるハイリスク薬として、主に以下の薬が挙げられます。
・抗悪性腫瘍薬
・免疫抑制剤
・不整脈用剤
・抗てんかん剤
・血液凝固阻止剤(内服薬に限る)
・ジギタリス製剤
・テオフィリン製剤
・カリウム製剤(注射薬に限る)
・精神神経用剤
・糖尿病用剤
・膵臓ホルモン剤
・抗HIV薬
詳細は、厚生労働省のホームページで確認できます。
「特定薬剤管理指導加算2」の算定要件
特定薬剤管理指導加算2 (要届出) |
「連携充実加算」を届け出ている医療機関で、抗悪性腫瘍剤を注射された悪性腫瘍の患者さんに対し、抗悪性腫瘍剤等を調剤する保険薬局の薬剤師が以下の要件を全て実施した場合に算定する。 ①患者のレジメン等を確認し、必要な薬学的管理及び指導を行うこと。 ②服用状況、副作用の有無等について患者またはその家族等に確認すること。 ③ 保険医療機関に対し、必要な情報を文書により提供すること。 |
100点 (月1回まで) ※患者1人につき、同一月に2回以上の情報提供を行った場合も、算定できるのは1回のみ |
特定薬剤管理指導加算2の施設基準
なお、特定薬剤管理指導加算2の算定に関わる薬剤以外の薬剤を対象として、特定薬剤管理指導加算1にかかる業務を行った場合は、併算定が可能です。
調剤報酬加算にはさまざまな種類があります。本記事で紹介した7つの加算は、薬剤師にとって身近なものなので、ぜひ覚えておきましょう。
「重複投薬・相互作用等防止加算」は、薬剤師の介入によって取れる加算です。在宅訪問では残薬を発見することも多いので、積極的に疑義照会を行いましょう。
HYUGA PRIMARY CARE(株)の「KIRARI PRIMEサービス」では、在宅薬局経営をトータルサポートしています。加算獲得、薬価コスト削減、在宅訪問の効率化など、さまざまなお悩みを解決に導きます。在宅薬局経営にお悩みの方は、ぜひKIRARI PRIMEサービスにご相談ください。
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