在宅薬局経営で利益を上げるために必要な施策とは? 調剤報酬加算促進、デジタル化、時間外ニーズ対応…
外来から在宅薬局へと移行し、「何となく」在宅業務を進めていないでしょうか? 在宅には、在宅に適した体...
KIRARI PRIME(きらりプライム)
調剤薬局とドラッグストアでは業界再編が進み、M&Aによる事業承継も数多く行われています。業界の動向を押さえつつ、調剤薬局の強みを見出し、これからの時代にふさわしい薬局経営を進めることが大切です。
この記事では、調剤薬局・ドラッグストアの最新動向をレポートし、薬局経営を改善するためのアクションを解説します。
目次調剤薬局業界では、M&Aによる再編が加速しており、生き残りをかけた攻防が続いています。ドラッグストアでは調剤併設型の出店が相次いでおり、調剤薬局との垣根がなくなっている点にも注意しなくてはなりません。
厚生労働省の「令和5年度 調剤医療費(電算処理分)の動向」によると、2023年度の調剤医療費(電算処理分に限る)は、前年度比5.5%増の8兆2,678億円でした。処方箋枚数(全数)は8億8,759万枚で、前年度比6.0%増と大きく伸びました。
損益差額と店舗数は、コロナ禍を受けて2019〜2021年は減少しましたが、2023年には回復しています。調剤薬局は飽和状態で以前より店舗数の減少が予測されているものの、2023年には大きく増加しました。
※中央社会保険医療協議会「医療経済実態調査」第20~24回をもとに作成
中央社会保険医療協議会の「第24回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告(2023年実施)」によると、法人薬局の損益差額は税引前で約1,532万円です。数字だけを見れば、順調に成長しているように見えますが、薬局業界ではM&Aによる再編が進んでいます。
薬局規模の内訳を見ると、2023年には20店舗以上の法人薬局のシェアが拡大し、約5割を占めています。一方、個人と1店舗法人の薬局は、2021年まではシェアを維持していたものの、2023年には店舗数が半減しました。調剤報酬改定の厳格化などを理由に経営が厳しくなり、M&Aによる売却が行われたと推察できます。
法人薬局の規模が大きくなるほど、給与費の比率は低くなっています。たとえば、2〜5店舗の給与費の構成比率は19.3%に対し、300店舗以上では9.9%と、約2倍もの差があります。資金のある大規模な法人薬局では、AIやシステムを活用することで効率的なオペレーションを実現し、無理のない人件費削減に成功しています。
日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)は、4月12日第190回定例合同記者会を開催しました。これによると、2023年度のドラッグストアの全国総売上高(推定値)は9兆2,022億円で、初めて9兆円を突破しました。ドラッグストアの全国総店舗数は2万3,041店舗で、前年より957店舗増加しています。
調剤額は1兆4,025億円(前年比9.5%増)で、総売上高の15.2%を占めています。調剤医療総額に占めるシェアは、暫定値で17.8%です。調剤併設店舗も増加しており、今後もシェア率は高まると予想できます。
大手ドラッグストアには、「かかりつけ薬局」をコンセプトに挙げ、調剤併設や24時間営業に積極的に取り組む企業もあります。調剤事業だけでなく、介護事業も手掛ける企業も増えており、今後も全国的に地域密着型経営の店舗展開が行われるでしょう。
ドラッグストア業界でもM&Aが盛んに行われており、近年ではスーパーマーケットチェーンや介護事業などの異業種を買収する事例も増えています。地域密着型経営や海外進出など、それぞれの戦略に応じて、大手ドラッグストアのさらなる成長が予測されています。
2024年度調剤報酬改定では、地域医療への参画や薬局DXが主要テーマとなりました。かかりつけ機能を持たない薬局は、市場からの撤退も余儀なくされています。ここでは、調剤薬局の経営を改善するための5つのアクションを取り上げます。
地域密着型薬局の強みは、患者さんとの密なコミュニケーションを通した丁寧なフォローにあります。患者さんの悩みや困りごとをヒアリングしながら、患者さんの症状や生活スタイルに合わせたアドバイスを行うことが大切です。
2024年度調剤報酬改定では、重点的な服薬指導・説明が必要な場面の評価として、「特定薬剤管理指導加算3」が新設されました。また、かかりつけ薬剤師の業務を評価するため、吸入薬指導加算と調剤後薬剤管理指導料(旧調剤後薬剤管理指導加算)は、かかりつけ薬剤師指導料との併算定も可能となっています。丁寧な服薬指導を行うにあたって、薬剤師の専門性が問われています。
服薬情報を一元的・継続的に管理することも、かかりつけ薬局の重要な機能です。服薬情報の一元的・継続的管理には、ICTツール(電子版お薬手帳や電子処方箋)の活用がポイントとなります。
2024年度調剤報酬改定では、在宅医療における薬剤師の関与に高い評価が設けられました。いまや在宅対応は、薬局経営に欠かせないサービスです。
2024年度調剤報酬改定で見直し・新設された在宅訪問に関連する評価
評価 |
概要 |
在宅移行初期管理料 |
計画的に実施する在宅訪問より前の段階で患者宅を訪問し、必要な情報収集や指導を行い、医師等へ文書による情報提供を行った場合の評価 |
在宅患者訪問薬剤管理指導料 |
定期的な在宅訪問を行った際に、患者1人につき月4回に限り算定 ただし、以下の場合は週2回かつ月8回まで
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在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料 |
緊急時に在宅訪問を行った際に、1と2を合わせて患者1人につき月4回に限り算定 ただし、以下の場合は週2回かつ月8回まで
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夜間・休日・深夜加算 |
末期の悪性腫瘍や注射による麻薬の投与が必要な患者の急変時に、医師の指示に基づき緊急訪問を行った場合の加算 |
在宅薬学総合体制加算 |
麻薬の備蓄や無菌調剤など、在宅医療に係る体制や実績に基づく評価 |
地域支援体制加算の施設基準にも、「在宅訪問実績24回以上」「かかりつけ薬剤師の届出」が加えられています。つまり、在宅医療に参入しなければ、地域支援体制加算を算定することはできません。
これからの薬局には、在宅対応・かかりつけ機能を持つことを前提として、より高い地域医療への貢献が求められます。在宅患者緊急訪問薬剤管理指導を算定できるように24時間体制を整備したり、ハードルの高い在宅薬学総合体制加算2の算定をめざしたりと、在宅薬局としてのステップアップもめざしましょう。
薬局と医療機関の密な連携によって、質の高い在宅医療が実現できます。在宅医師と信頼関係があれば、在宅移行初期管理料や在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料を算定できる機会も増えるでしょう。
在宅医療での他職種連携では、ICT活用が推奨されています。ICTツールを用いることで、リアルタイムかつ細やかな情報共有が可能です。緊急時は電話、通常の連絡はICTツールを用いるなど、連絡手段を併用して最適な連携体制を築きましょう。
新たに医療機関との関係を構築したい場合は、薬局が積極的な周知活動を行う必要があります。医療機関へ直接営業に行ったり、地域ケア会議や医療機関が開催する研修に参加したりするなど、自発的に行動することが大切です。
2024年度調剤報酬改定では、地域支援体制加算の施設基準に、「一般用医薬品及び要指導医薬品等(基本的な48薬効群)の販売」が追加されました。これは、健康サポート薬局の要件と同じであり、薬局の健康サポート機能の強化が期待されていることがわかります。
薬局の健康サポートの内容は、その地域の特性や住民の性質を考慮する必要があります。各薬局では、カフェを併設したり、女性の健康サポートに特化したり、さまざまな工夫を凝らしています。商圏分析を行い、地域にふさわしい健康サポートについて検討してみてください。
薬局DXによって、多職種連携や薬剤師の働き方改革、人件費削減などが実現できます。とくに、業務工程が多くなる在宅薬局では、デジタル化や自動化によるオペレーション最適化が欠かせないものとなっています。
これからは薬局でも、報告書やトレーシングレポート、薬歴といった書類業務のデジタル化は基本となるでしょう。記載漏れや送付ミスといったヒューマンエラーも防げるので、患者さんの安全確保にもつながります。
2024年調剤報酬改定では、電子処方箋やマイナ保険証などの体制を整備することで加算できる、医療DX推進体制整備加算が新設されました。2024年10月以降は、マイナ保険証の利用実績によって、3段階評価へと見直される予定です。
(出典:厚生労働省「医療DX推進体制整備加算・医療情報取得加算の見直しについて」)
調剤薬局とドラッグストアの数は、年々増加しています。調剤薬局では20店舗以上の法人が優勢で、個人や1店舗法人の割合が減少傾向にあります。ドラッグストアの売上高は9兆円を突破し、調剤医療総額に占めるシェアは暫定値で17.8%です。今後も調剤併設ドラッグストアの出店は続き、勢力を増していくことが予測できます。
これからの薬局経営において、在宅対応は必須です。かかりつけ機能を発揮し、能動的に在宅医療に関与していくことで、地域住民からの支持も得られるでしょう。
きらりプライムサービスでは、在宅薬局経営をサポートしています。在宅薬局体制の整備や経費削減にお困りの薬局経営者の方は、ぜひ一度お問い合わせください。
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