在宅薬局経営で利益を上げるために必要な施策とは? 調剤報酬加算促進、デジタル化、時間外ニーズ対応…
外来から在宅薬局へと移行し、「何となく」在宅業務を進めていないでしょうか? 在宅には、在宅に適した体...
KIRARI PRIME(きらりプライム)
業界再編が続く調剤薬局業界では、M&Aに大きな関心が寄せられています。「店舗経営が困難になってきた」「次期後継者が見つからない」など、事業の継続について課題を抱える薬局経営者の方も多いでしょう。
ヒュウガプライマリケアが運営する「きらり薬局」でも、これまで数々のM&Aを実施してきました。本記事では、きらり薬局の経験をもとに、薬局のM&Aの現状と事例についてご紹介します。
※本記事は、きらりプライムサービスの【第56回 加盟店・未加盟店セミナー「事例公開!調剤薬局におけるM&Aの実際】の内容をもとに作成しています。 |
中央社会保険医療協議会の「第24回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告(2023年実施)」によると、近年は20店舗以上の法人薬局が勢力を強めており、2023年には約5割を占めています。
※厚生労働省「薬局薬剤師に関する基礎資料(概要)」と「第24回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告(2023年実施)」をもとに作成
2021年までは、2-5店舗薬局が一部を事業譲渡し、1店舗経営に切り替えたことでシェアを維持していました。しかし、2023年になると、1店舗薬局は半減しています。調剤報酬改定の厳格化などが原因で経営に行き詰まり、売却が行われたと推察できます。
詳しい統計は出ていませんが、薬局のM&Aは年間200件ほど行われていると言われています。今後は薬局経営者の高齢化などを理由に、事業承継のためにM&Aが選ばれる機会が増えるでしょう。
調剤報酬改定では、300店舗以上の大手薬局チェーンや、処方箋集中率の高い門前薬局への調剤基本料が年々減算されています。このため、以前に比べると、大手薬局チェーンも気軽に買収しにくい状況です。ただ、調剤報酬改定の厳格化も踏まえて、買収の目安価格は下降傾向にあります。
大手薬局チェーンでは、「処方箋受付回数40万回超または300店舗以上」という条件が、調剤基本料3に降格する目安の1つとなります。このため、300店舗を超える前に不採算店舗を売却し、その分を買収して新規薬局を出店するという戦略を取っている大手薬局もあります。
一昔前まで、M&Aは「身売り・乗っ取り」というイメージが強かったものの、現在は経営戦略の手段のひとつとしてM&Aを利用するケースが増えています。M&Aによって、売却側・買収側がWin-Winの関係になり、理想的な事業承継を実現させた例は少なくありません。
M&Aの仕組みや流れについて、さほど詳しく知らないという薬局経営者の方も多いでしょう。ここでは、M&A・事業承継について、簡単な基礎知識をお伝えします。
調剤薬局業界のM&Aには、主に株式譲渡と事業譲渡の2種類があります。
株式譲渡 |
調剤薬局の運営会社の株式を売却すること |
事業譲渡 |
一部事業や店舗のみを売却すること(店舗の切り売り) |
株式譲渡と事業譲渡のどちらがよいかは、薬局の事情や経営者の意向によって異なります。株式譲渡は比較的手続きが簡易ですが、特定の店舗だけを売却・譲受したいのであれば事業譲渡のほうが適しています。かかる税金や契約の取扱いについても異なるので、その都度自分の薬局に適した方法を選ぶことが大切です。
売却側の社長の今後については、条件を受け入れてもらえる買収先企業を探すほか、買収先から提案されることもあります。具体的には、以下のようなパターンが考えられます。
①元社長が社長のまま残る(M&Aの買収先より人材を派遣してもらう、仕入れを改善するなど) ②元社長が取締役で残る ③元社長が社員・顧問で残る ④元社長の息子が社長になる ⑤対象会社の社員が社長になる ⑥元社長が買収先企業の取締役になる |
M&Aは、売却側と買収側が話し合い、お互いに条件に納得した上で実行されます。売却するからといって、必ずしも社長に不利な条件を無理強いされることはないので安心してください。
M&Aで事業拡大に成功するためには、4つのポイントがあります。ここでは、簡単に概要を解説します。
ポイント① 適正価格かどうか?
M&Aでは、企業の適正価格を知るために、一般的にEBITDAが用いられます。EBITDAとは、企業を買収した際に、買収コスト(投資額)を何年で回収できるかを測定する指標のことです。調剤薬局では多くの場合、EBITDAの3〜5年分が相場となります。
EBITDA(償却前営業利益)=営業利益+減価償却費 ※株式譲渡の場合は、+純資産、ネットキャッシュ |
薬局のEBITDAの算定では、調剤報酬加算状況地域支援体制加算・医薬品仕入れ率・労働分配率(労務費率)などが影響を与えます。買収側はEBITDAが低いほど安く購入でき、売却側はEBITDAが高いほど高く売ることができます。
▼②仲介会社の手数料
おおよそ、EBITDAの1〜1. 5年分が目安です。多くのM&A支援機関では、レーマン方式を成功報酬の基準としています。
※レーマン方式の基本計算式:「成功報酬の金額=報酬基準額×料率」
▼③法人の場合はDD(デューデリジェンス)の実施
DDとは、MA対象店舗の価値やリスクを分析する事前調査のことです。法務DDや財務DDなどがあります。売り手が買い手に対し、財務や法務の事項に間違いがないことを保証する「表明保証」を契約書に入れることも大切です。
▼④自社の出店方針との合致性の確認
M&Aは、必ず自社の出店方針に合っているかを確認することが大切です。ヒュウガプライマリケアの場合は、「ドミナント戦略・薬剤師の採用のしやすさ・3年後の計画からの店舗イメージ数」を軸にM&Aを検討しています。
ここで、ヒュウガプライマリケアが携わったM&Aの事例をご紹介します。ヒュウガプライマリケアのセミナーに参加した薬局オーナー様より、薬局経営についてメールでご相談をいただきました。
①オーナーより薬局経営についてのご相談
2店舗を経営するオーナー様からのご相談
B店は、地域の方に愛される歴史の長い門前薬局です。処方箋受付枚数が毎月1,800枚となると、十分に利益を確保できていてもおかしくはありません。実態を調査するため、弊社では詳細なヒアリングを行いました。 |
②薬局の課題
オーナー様や薬局スタッフひとり1人と面談を重ねた結果、以下のような課題が浮かびあがりました。
弊社は、収益率アップを目的とした効率化を支援するため、課題抽出・目標設定・店舗オペレーションの見直しを図りました。しかし、薬剤師・管理者間の溝が深く、なかなか改善が見込めません。深刻な人材不足を目前に控え薬剤師の募集も行いましたが、地域柄採用が難しく、オーナー様自らがB店に勤務する日々が続きました。 |
②事業承継の選択肢としてM&Aを検討
オーナー様は70代前半で、多忙なB店に勤務し続けるのは体力的に厳しい状況でした。次期後継者についても悩んでおられたため、他社と協力して事業承継を行うM&Aに興味を持たれました。 ひとまず「B店を事業譲渡した場合の査定額を知りたい」とのご相談を受け、ヒュウガプライマリケアより査定額を提示します。すると、B店の事業譲渡の査定額は、オーナー様が想定した1.5倍の価格となりました。査定額に納得されたオーナー様は、本格的にM&Aを進めるべく、希望に添える譲受先の照会・選定を行いました。 |
③事業譲渡する際のオーナーの希望
事業譲渡をするにあたって、オーナー様は「薬局スタッフの待遇を維持したい」「薬局名は残したい」といったご希望がありました。譲受先候補の企業が何社か上がり、各社と数回の面談を重ね、そのうちの一社と事業譲渡契約を締結します。譲受企業側にも、オーナー様の意向を汲んでいただきました。 |
④譲渡後は本店に勤務し、経営を継続中
譲渡後は、譲受先企業よりB店へ人員補充が行われ、効率的なオペレーションに改善されました。オーナー様はOTCをメインとした本店で、奥様と事務スタッフ3名とともに、無理のない範囲で経営を継続中です。何より、地域に根付いてきた薬局を最善の形で事業承継できたことで、オーナー様も安心されています。 |
経営者の高齢化や調剤報酬改定の厳格化といった事情から、事業承継に悩まれる薬局も多いでしょう。事業を継続し、よりよいサービスを地域に残す手段として、M&Aは候補のひとつとなります。
ヒュウガプライマリケアでは、薬局経営のサポートを行うほか、M&Aについてのご相談も受け付けております。「薬局の査定額を知りたい」「このエリアの薬局をリサーチしたい」といったご希望があれば、ヒュウガプライマリケアより情報提供をいたしますので、お気軽にお問い合わせください。
今後、調剤薬局業界では、薬局経営者の高齢化や調剤報酬改定の厳格化などを理由に、M&Aが盛んに行われると予測できます。以前はマイナスイメージの強かったM&Aですが、今は経営戦略のひとつとして活用されるケースも増えています。薬局経営者の事業意欲や変化などを考慮し、自分と家族、従業員、そして患者さんも幸せになると感じたとき、M&Aは売り手・買い手ともに有益となるでしょう。
ヒュウガプライマリケアでは、薬局のM&Aについてのご相談も受け付けております。薬局経営にお悩みの方や、買収を検討されている方は、ぜひお問い合わせください。
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