専門医療機関連携薬局と地域連携薬局とは?認定要件と薬剤師が求められる役割について解説!

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専門医療機関連携薬局と地域連携薬局とは?認定要件と薬剤師が求められる役割について解説!

令和3年の8月から、機能別薬局の認定制度が始まりました。この影響でできたのが地域連携薬局です。

地域に根ざした薬局であることは名前から何となくわかりますが、具体的にどのような薬局なのでしょうか。

今回は専門医療機関連携薬局や地域連携薬局になるための要件や役割などを詳しく紹介します。


目次

専門医療機関連携薬局とは?

2人に1人が一生のうちにがんと診断される日本。がんに罹患するのは、決して珍しいことではなくなってきました。がん患者のように専門的な治療が必要な方をしっかり管理するためにできたのが専門医療機関連携薬局です。

専門医療機関連携薬局とは、高度で専門的な薬学管理が必要な患者さんに対応するための薬局です。

薬局で専門的な調剤を行っていくことはもちろん、周辺の医療機関や薬局、施設などと連携を取ってさまざま場所で高度な薬学管理を行えるようサポートしていく働きもあります。

地域連携薬局とは?

地域連携薬局とは、さまざまな施設と連携を取りながら対応できる薬局のことです。都道府県知事の認定を受けることで、地域連携薬局と名乗ることができるようになります。

患者さんが入院したり施設に入居しても薬物治療を滞らせることなくスムーズに行っていくことが目的です。

どこで治療を受けていても患者さんが飲んでいる薬はほとんど変わりません。継続で服用となることがほとんどなため、地域連携薬局で服薬状況を管理して患者さんが利用している医療機関や施設、他の薬局などに情報提供を行います。

専門医療機関連携薬局における認定要件は?

専門医療機関連携薬局の認定を受けるためには、大きくわけて次の3つの要件を満たす必要があります。どれか1つでも欠けていたら認定を受けられないため、事前にしっかりと準備をしておきましょう。

①プライバシーに配慮した構造設備がある

  • 患者さんの服薬指導や相談に配慮した構造設備
  • 高齢者や障害者などでも円滑に利用できる構造設備

患者さんが安心して服薬指導を受けられるよう、パーティションで区切ったり個室を用意したりする必要があります。

とくにがん治療をされている患者さんの場合は、周りへの配慮が必要なケースが多くあるものです。患者さんにも周りにも不快な思いをさせないようにしなければいけません。

また、体を思うように動かせない方でも利用しやすい設備を整えることも必要です。

②周囲の医療施設と情報を共有できる体制が整っている

  • 専門的な医療の提供を行う医療機関との間で開催される会議への参加
  • 専門的な医療の提供を行う医療機関に勤務する薬剤師などのスタッフに対して随時報告および連絡することができる体制
  • 専門的な医療の提供を行う医療機関に勤務する薬剤師などのスタッフに対して報告および連絡した実績
  • 他の薬局に対して報告や連絡ができる体制

がん治療に必要な情報提供を行うためには、専門的な医療機関が開催している会議へ参加する必要があります。

また、医療機関や薬局などに情報を提供できる体制に加えて、これまでに情報提供をしてきた実績も必要です。

③専門的な薬学的知見に基づく調剤及び指導の業務体制

  • 開店時間外の相談に対応する体制
  • 休日や夜間に調剤を応需する体制
  • 在庫として保管している傷病の区分に係る医薬品を必要な場合にほかの薬局開設者の薬局に提供する体制
  • 医療用麻薬の調剤応需体制
  • 医療安全対策
  • 継続して1年以上常勤として勤務している薬剤師の体制
  • 傷病の区分に係る専門性を有する常勤として勤務している薬剤師の体制
  • 傷病の区分に係る専門的な内容の研修の受講
  • 地域のほかの薬局に対して、がんに関する専門的な内容の研修の実施
  • 地域のほかの医療提供施設に対して、がんに関する医薬品の適正使用について情報提供

24時間、いつでも患者さんが必要とするときは対応できるような体制が必要になります。かかりつけ薬剤師がいる場合は、担当者が対応することが基本です。

がん治療に必要な医薬品、医療用麻薬なども在庫しておきます。そのほか、継続して1年以上勤務している薬剤師を置いたり、研修を受講したりなども必要です。研修を受講するだけでなく、自らが研修を主催し、情報提供に努める必要もあります。

地域連携薬局における認定要件は?

認定要件は次の4つです。それぞれ主に、次のような要件を満たす必要があります。

①プライバシーに配慮した構造設備がある

  • 患者さんの服薬指導や相談に配慮した構造設備
  • 高齢者や障害者などでも円滑に利用できる構造設備

服薬指導の内容を周りに聞かれたくないと思われている患者さんは少なくありません。患者さんが安心して薬局で相談できるようにするためにも、仕切りを作ったり個室を用意したりして情報が外に漏れないような設備を整える必要があります。

ただし、ただ仕切りをつければいいというわけではありません。十分に間隔を空けることが大切です。

②周囲の医療提供施設と情報を共有できる体制が整っている

  • 地域包括ケアシステム構築に役立つ会議へ参加
  • 地域における医療機関に対して報告や連絡をする
  • 地域における医療機関に対して報告や連絡をした実績
  • ほかの薬局に報告や連絡を行う体制

周囲の薬局や施設にいる薬剤師や医療従事者へ向けて必要な情報をすぐに提供できる体制を整えておきます。
地域包括ケアシステムの構築に向けて行われる地域ケア会議や医療従事者が参加している退院時カンファレンスなどにも参加することが必要です。

また、近隣の医療機関へ情報提供を行った実績を提示する必要もあります。在宅医療で作成した報告書の提出でも構いません。

専門医療機関連携薬局における薬剤師の3つの役割

専門医療機関連携薬局は、がんの治療に関する管理をスムーズに行うための薬局です。治療を行い患者さんのQOLを上げる以外に、次のような役割があります。

①専門性の高い薬学的管理を行う

がんの治療は、何も入院中にのみ行うものではありません。近年では外来で抗がん剤が処方されるケースは普通にあるものです。専門医療機関連携薬局ではがんの治療を行っている患者さんがよく足を運ぶことから、専門性の高い薬学的管理が必要になります。

一般的な服薬指導に加えて副作用による吐き気や嘔吐、下痢などへの対処方法なども必要に応じてアドバイスする必要があるでしょう。皮膚障害が出ている場合は、保湿剤や洗浄剤、テーピングなどの販売も必要です。

抗がん剤での治療はこのように、さまざまな角度から治療に介入していかなければなりません。

②専門性の高い情報の発信を行う

専門性を高めるために研修を受講するだけでなく、専門医療機関連携薬局が主体となって情報を発信していくことも大切です。

ほかの薬局にがんの治療をしている患者さんが来局する可能性はゼロではありません。
いつどこに患者さんが来てもしっかり対応できるような体制を整えておく必要があるのです。
そうすることで、いつでも安心して患者さんが治療を進められるようになります。

③周囲の医療機関へ医薬品を供給する

該当の薬局だけでなく、地域全体で医薬品の供給に努めることが重要です。そのためには、専門医療機関連携薬局が主体となって必要な医薬品を供給できる体制を整えなければいけません。

抗がん剤のなかには高額なものもあり、在庫したくてもできない薬局が少なくありません。そのような薬局へ医薬品を供給できるのは、薬局にとっても患者さんにとってもありがたいことです。

地域連携薬局における薬剤師の3つの役割

さまざまな薬局や施設と連携を取るための地域連携薬局。求められている役割は主に次の3つです。

①患者さんが安心して治療を進められる環境作り

「ここの薬局に任せれば間違いない」と思ってもらえるような環境を作ることが大きなミッションです。相談しやすい環境や雰囲気作り、足が悪くても利用できるような設備が求められています。

何かあった際にいつでも調剤をしてくれたり相談に乗ってくれたりする環境も、患者さんにとっては非常にありがたいものです。いつでも安心して治療を進められる環境を整えることは地域連携薬局の大きな役割でしょう。

②薬局や施設などへの情報提供

患者さんがどこの薬局や施設を利用しても情報がスムーズにやりとりされる環境を整えることが求められています。
必要な情報を必要なときにいつでも提供できる環境があれば、患者さんの治療が滞ってしまうことがありません。

③在宅医療を行う際の連携

令和3年版高齢社会白書によると令和22020)年101日時点で、日本は高齢化率が28.8%を占める超高齢社会です。高齢者の割合が今後も増えていくことが予想されているため、在宅医療の必要性はますます高まります。

在宅医療に必要な医療機器を提供したり実際に在宅医療に貢献したりすることで、必要とするすべての方が適切な医療を受けられるようにする役割があるのです。

専門医療機関連携薬局に向いている薬剤師とは?

専門医療機関連携はどんな薬剤師が向いているのでしょうか?3つ考えてみたので是非チェックしてみてください。

①薬学知識を常に学ぶ姿勢がある薬剤師

がん治療など常に医療情報をアップデートする領域は積極的に勉強会に参加したり、自ら薬学知識を学ぶ姿勢がある薬剤師が専門医療機関連携薬局に向いています。ガイドラインからエビデンスの調べ方まで薬剤師が社会に出ても学んでスキルアップをしたいと思っている方が専門医療機関連携薬局に向いていると感じます。

②専門知識を教えることが好きな薬剤師

地域活動の中で研修資料を自ら作成をしたり、発表をして知識を共有する役割が専門医療機関連携薬局にはあります。自分だけの薬学知識にするのではなく、同じ志しを持つ薬剤師に対しても丁寧に知識を伝えられる薬剤師は向いていると思います。

③専門分野を極めたい薬剤師

今回の専門領域では「がん領域」が多く登場しました。しかしこれからは緩和領域であったりと、もう少し細分化して専門医療機関連携薬局が盛り上がっていくことが予想されます。例えばがんの中でも遺伝子の領域であったり副作用対策チームなどもっと薬剤師が関わることが増えてくるでしょう。
患者さんから情報を頂くことはとても貴重なことですし、稀有な事例や症例などを研修や研究で没頭したいと思うような薬剤師が専門医療機関連携薬局にマッチしていると感じます。

地域連携薬局に向いている薬剤師とは?

では地域連携薬局に向いている薬剤師はどんなタイプなのでしょうか?3つ考えてみたので是非参考にしてください。

①薬局外へ積極的に向かうことができる薬剤師

地域連携薬局は「患者さんを待っている」、「処方箋が来て当たり前」ではないことを自分事として考えられる薬剤師が向いていると考えます。

薬局の外へ、薬学的な価値を提供する方が施設との連携を上手に実行できる薬剤師が向いていると言えるでしょう。

地域連携薬局の薬剤師は待ちの姿勢ではなくて自らが患者さんや施設の患者さんに対して薬学的なサポートをしようと心がける方が向いています。

②ジェネラルな知識を持つ薬剤師

ジェネラルとは幅広い知識や技能、経験などを指す言葉です。
薬剤師になると薬の専門性はもちろんですが、医療、介護、診療報酬、予防に関してまで幅広い知識が必要になっていきます。
地域連携薬局に向いている薬剤師は内科領域だけ強いのではなく、介護の相談を患者さんやそのご家族からされた時も真摯になって受け答えをしてサービスを提供できる方だと思います。
地域連携薬局では自らを客観的に見れる方であったり、物事を多角的に把握ができるジェネラル思考の方が向いていると言えるでしょう

③地域のことに詳しい薬剤師

住んでいる地域や働いている地域にどれだけ熱量を注げるか、そして地域の困り事を解決している薬剤師が地域連携薬局に向いていると感じます。地元で何十年も続いている飲食店や地域伝統で毎年開催する祭りなど、ちょっとした興味や慣習にもヒントは出てきます。どれだけ地域に溶け込む薬剤師になれるかが鍵になるでしょう。「医療だけでなくこの地域のことはあの薬局にいる薬剤師さんに聞こう」となると自分自身も地域の方にも頼られる構造になるはずです。

まとめ

専門医療機関連携薬局とは、主にがん患者に対して高度で専門的な薬学管理を行う薬局のことです。一方で地域連携薬局とは、さまざまな薬局や施設などと連携が取れる薬局のこと。どちらも共通しているのは、認定を取得するための要件があるということです。

私たち未来の日本や、今後より増加する高齢者に対して薬局側からアプローチをする必要があるでしょう。しかし、認定を取得するための要件がいろいろとあるため、一朝一夕でなれるわけではありません。勤務する薬剤師に負担がかかることも考えられます。

うまく周りの薬剤師と協力して健康と安心の両方を提供できる薬局作りを目指していきましょう。

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監修薬剤師:原 敦子
HYUGA PRIMARY CARE株式会社
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