薬局経営における調剤技術料・薬学管理料とは? 2022調剤報酬改定の中身もチェック

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薬局経営における調剤技術料・薬学管理料とは? 2022調剤報酬改定の中身もチェック

1. 薬局経営の技術料(調剤技術料・薬学管理料)とは?

調剤報酬は、「調剤技術料」「薬学管理料」「薬材料」「特定保健医療材料料」の4つで構成されています。このうち、薬局の売上にもっとも影響を与えるのは、技術料にあたる調剤技術料と薬学管理料です。

2022年の調剤報酬改定によって、調剤技術料では「調剤料」が廃止されて「薬剤調整料」が新設。さらに薬学管理料では、「薬剤服用歴管理指導料」が廃止され、「調剤管理料」と「服薬管理指導料」が新設されました。

ここでは、2022年の調剤報酬改定をふまえて、調剤技術料と薬学管理料の詳細を見ていきます。

1-1. 調剤技術料

調剤技術料とは、薬局の機能や体制を評価するもので、「調剤基本料」と「薬剤調整料」の2項目で構成されています。



調剤技術料


調剤基本料

薬局の調剤体制を評価するもの。薬局の運営体制や処方箋の受付回数、後発医薬品(ジェネリック)の調剤割合などによって決まります。

薬剤調整料

調剤業務のうち、薬剤の調製や取りそろえ、最終監査に対する評価です。

調剤基本料は、医薬品の備蓄や薬局経営の効率性を考慮して設定されています。処方箋の受付枚数が多い、あるいは同じ医療機関からの処方箋の集中率が高いといった場合には、調剤基本料が低く設定されることもあるので確認が必要です。

調剤基本料には、「地域支援体制加算」「連携強化加算」「後発医薬品調剤体制加算」といった加算料も含まれます。地域支援体制加算は、調剤報酬改定によって4区分に細分化され、質の高い医療提供体制を整えている薬局がより高く評価される仕組みとなりました。

薬剤調整料は、調剤報酬改定にて、調剤料に代わって新設された項目です。内服薬、頓服薬、外用薬など、調製した薬剤の種類によって点数が異なります。また、自家製剤の上で調剤する「自家製剤加算」や、軟膏などを混合して調剤する「計量混合調剤加算」など、特別な対応を行った場合に算定できる加算料もあります。

(出典:公益財団法人日本薬剤師会「調剤報酬点数表(令和4年10月1日施行)」

1-2. 薬学管理料

薬学管理料とは、薬剤師による薬学的管理や服薬指導、情報提供などを評価するものです。薬学管理料は、「調剤管理料」「服薬管理指導料」などの項目で構成されています。










薬学管理料


調剤管理料

薬剤師による患者情報の分析・評価、処方内容の薬学的分析などを評価します。点数は処方日数によって異なります。


服薬管理指導料

調剤管理料での分析を活用し、患者さんに対して処方薬の情報提供や服薬指導などを行った場合に算定します。

かかりつけ薬剤師指導料

かかりつけ薬剤師が、同意を得た患者さんに対して、必要な指導を行った際に算定できます。

服薬情報等提供料

医療機関や患者さんなどに、必要な情報提供を行った際に算定できます。

外来服薬支援料

患者さんの服薬コンプライアンスの向上を目的として、適切な服薬支援を行った場合に算定できます。

在宅患者訪問薬剤管理指導料

在宅患者さんに対して服薬指導などを行った際に算定できます。

調剤報酬改定により新設された調剤管理料では、調剤における対人業務の評価が拡充されました。オンライン服薬指導や在宅訪問での緊急対応の評価が新設・拡充され、ICT活用や在宅医療への参入を推進する動きが見られます。

なお、従来の調剤料に含まれていた一包化に対する加算は、薬学管理料の「外来服薬支援料2」へと移りました。


(出典:公益財団法人日本薬剤師会「調剤報酬点数表(令和4年10月1日施行)」

2. 薬局経営で技術料はどのくらい必要?

技術料は、薬局経営を維持するために非常に重要な要素です。薬局がめざすべき技術料の点数は、それぞれの薬局経営にかかる経費によって左右されます。薬局経営にかかる経費は、企業規模や立地、雇用人数などによって異なるので、まずは経費の内訳を正確に把握することが大切です。

ここでは、薬局経営における経費や、経営を維持するためにめざすべき技術料の報酬について解説します。

2-1. 薬局経営における経費を把握し、必要な技術料を割り出す

おおよその経費を把握できていれば、利益を確保するために必要な技術料が算出できます。以下の3つは、薬局経営で必ず発生する大きな経費であるため、必ず確認しておきましょう。

  • 薬剤購入費
  • 人件費
  • 家賃

薬剤購入費は、単に購入した金額だけでなく、在庫と照らし合わせて確認することが大切です。医薬品の在庫管理がうまくできていない場合、廃棄や不要在庫がかさむため、資金繰りが悪化する可能性があります。

固定費にあたる人件費と家賃は、削減によって利益率が上がりやすいポイントです。ただし、人員削減が行き過ぎると、薬剤師1人当たりの業務量が増えることになり、離職につながる可能性もあります。正社員採用をすべきか、パートで賄えるのかなどを考え、スタッフに負担がかからないように注意しましょう。

経費の大部分を占める家賃は、薬局のある地域や立地条件などによって金額が異なります。しかし、調剤報酬は全国共通であるため、利益率向上を狙うなら家賃は低いほうが有利です。近年では、門前薬局からの脱却が促されていることも踏まえて、今一度薬局の立地について考えてみるのもよいでしょう。

2-2. 技術料の全国平均は調剤報酬の約25%

厚生労働省による調査によると、2022年度の調剤医療費(電算処理分)は7兆8,332億円です。そのうち、技術料は2兆1,264億円であり、全国の調剤薬局に支払われた調剤医療費の約27%となっています。

(出典:厚生労働省「「令和4年度 調剤医療費(電算処理分)の動向」を公表します ~調剤医療費(電算処理分)の年度集計結果~」

薬局経営での支出によって必要な技術料は異なりますが、全国平均である売上の27%という数字は、ひとつの目標となるでしょう。

一方で、2020年度の調剤医療費における技術料の割合は約25%であったため、技術料の割合が年々増加しているのも注意すべき点です。将来的には、調剤医療費における技術料の割合は30%をめざすと、安定した薬局経営を続けられるでしょう。

3. 薬局・薬剤師が押さえておくべき技術料の基礎知識

薬局経営を維持するためには、薬局・薬剤師が技術料について正しく理解しておく必要があります。技術料に対する理解が曖昧なままでは、利益を確保するのは困難です。

ここでは、薬局・薬剤師が必ず押さえたい技術料の基礎知識を解説します。

3-1. 技術料は条件によって増減する

技術料は、薬局の立地や企業規模などで増減します。たとえば、病院の敷地内に薬局を構える敷地内薬局には、「特別調剤基本料」が適応されます。調剤基本料は1〜3まであり、もっとも高い点数は42点ですが、特別調剤基本料はわずか7点です。このように、立地によって技術料が1/4になる可能性があるため、薬局を開業する場合には立地について確認することが重要です。

また、処方箋受付回数や処方箋集中率などの一定の条件を満たすと、適応される調剤基本料の点数が低くなります。薬局の多店舗経営を視野に入れる場合は、企業規模拡大によるメリット・デメリットについて十分に検討してください。

3-2. 技術料を増やすには「地域支援体制加算」「後発品医薬加算」が重要

技術料を増やすためには、「地域支援体制加算」と「後発医薬品調剤体制加算」を算定することが重要です。どちらの項目も、2022年の調剤報酬改定によって見直しが行われたため、内容をしっかり確認しておきましょう。

・地域支援体制加算
地域医療に貢献した薬局の体制や実績を評価するための項目です。2022年の調剤報酬改定によって、地域支援体制加算1〜4の区分に細分化されました。全区分共通の施設基準と、各区分における実績要件を満たすことで、点数が決定します。



調剤基本料1

地域支援体制加算1

(必須条件3+選択条件1)

39点

地域支援体制加算2

(地域支援体制加算1+選択条件3以上)

47点



調剤基本料1以外

地域支援体制加算3

(麻薬小売業+必須条件2+選択条件1以上)

17点

地域支援体制加算4

(選択条件8以上)

39点

地域支援体制加算は、最高47点、最低17点となります。47点となる「地域支援体制加算2」を算定するためには、麻薬小売業者免許の取得や、在宅薬剤管理の実績が年24回以上、服薬情報提供料の実績が年60回以上など、さまざまな要件を満たす必要があります。地域支援体制加算2の難易度は高いものの、薬局の在宅医療への参入が強く求められている背景を考慮すると、挑戦する価値ありといえるでしょう。

また、対象となる地域支援体制加算は、適用される調剤基本料によって異なる点にも注意が必要です。調剤基本料1の薬局には地域支援体制加算1・2、調剤基本料1以外の薬局には地域支援体制加算3・4が適用されます。

・後発医薬品使用体制加算
後発医薬品使用体制加算とは、後発医薬品(ジェネリック医薬品)の使用割合によって算定できる評価です。調剤報酬改定によって、点数と使用数量割合の基準が引き上げられました。

後発医薬品使用体制加算1(後発医薬品使用割合80%以上)

21点

後発医薬品使用体制加算1(後発医薬品使用割合85%以上)

28点

後発医薬品使用体制加算1(後発医薬品使用割合80%以上)

30点

後発医薬品使用体制加算を算定するには、薬局でジェネリック医薬品を取りそろえ、患者さんの希望に応じてジェネリック医薬品を提供できる体制を整える必要があります。

2023年度末までに、全ての都道府県でジェネリック医薬品の数量シェアを80%以上とすることが国の目標です。薬剤師が患者さんに対してジェネリック医薬品の正しい知識を伝えて普及促進を図るとともに、薬局内で在庫を確保する体制を整えましょう。

(出典:厚生労働省「令和4年度調剤報酬改定の概要(調剤)」

4. 薬局の技術料をシミュレーション

実際の薬局経営で算定できる技術料について、シミュレーションしてみましょう。

【新規もしくはお薬手帳を持参されていない患者さん(服薬管理指導料59点)】が、【内服薬1剤を28日分処方(調剤管理料50点)】された場合の、薬局の技術料について2つのパターンを考えてみます。

・「調剤基本料1」「地域支援体制加算2」「後発医薬品調剤体制加算3」を算定している薬局の場合

調剤基本料1

42点

調剤管理料

50点

後発医薬品調剤体制加算3

30点

地域支援体制加算2

47点

服薬管理指導料

59点

技術料 合計

228点

・「調剤基本料3」を算定し、「地域支援体制加算」「後発医薬品調剤体制加算」がない薬局の場合

調剤基本料3

【月3.5万回超〜40万回以下】

21点

調剤管理料

50点

服薬管理指導料

59点

技術料 合計

130点

上記の例では、同じ処方箋内容でも、調剤基本料や地域支援体制加算などの違いによって、98点もの差があります。調剤基本料は最低で16点なので、さらに点数差が開く可能性もあるでしょう。

シミュレーションによって目標とする技術料が算出できたら、現状の技術料と照らし合わせて、達成方法について検討します。薬局として確実に技術料を算定していくためには、地域医療への進出や、患者さん目線に立ったサービスが欠かせません。個人薬局であっても、人材シェアリングサービスなどを活用することで、在宅対応・24時間対応の実現は可能です。薬局・薬剤師が一丸となって、技術料算定のためにできることから取り組んでいきましょう。

まとめ

調剤報酬における技術料とは、「調剤技術料」と「薬学管理料」を指します。調剤技術料の1つである「調剤基本料」は、薬局の立地や規模などによって変化するため、自分の薬局に適用される項目を確認しておきましょう。

技術料を増やすには、「地域支援体制加算」と「後発医薬品調剤体制加算」の算定をめざすのが近道です。薬局の地域医療への進出や後発医薬品の使用は、国が推進していることもあり、今後の調剤報酬でも強化されると考えられます。在宅訪問や無菌製剤などにも取り組み、薬局の医療サービスの質向上をめざすことが、技術料の算定につながるでしょう。

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監修薬剤師:原 敦子
HYUGA PRIMARY CARE株式会社
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