薬局の倒産は前年比約35%減…それでも危ない調剤薬局の経営の共通項とは?

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薬局の倒産は前年比約35%減…それでも危ない調剤薬局の経営の共通項とは?

1. 2022年度の調剤薬局の倒産は15件まで減少

調剤薬局数は年々増加していますが、コロナ禍であった2020〜2021年度は薬局の倒産も目立ちました。東京商工リサーチの調査によると、調剤薬局の倒産は2020年度で20件、2021年度には過去最高の23件を記録しています。薬局業界は倒産自体が珍しいため、多くの薬局経営者が不安を抱えたことでしょう。

しかし、コロナが実質的収束となった2022年度は、薬局倒産数は15件にまで減少し、前年度比34.7%減となりました。調剤薬局の倒産が落ち着いた理由として、患者さんの受診控えがおさまり、調剤医療費が回復したことが大きいと考えられます。数字だけを見れば、通常通りの薬局経営に戻ったと言えるでしょう。

1-1. 2022年度の調剤薬局の倒産理由

2022年度に倒産した調剤薬局15件のうち、10件の薬局が倒産理由を「経営不振」としています。コロナ禍の収束により処方箋枚数が増えたにも関わらず、利益確保が難しく倒産に至った薬局が多いことがわかります。

また、倒産した薬局のうち、11件が「正社員4人未満」の小規模薬局です。コロナ収束により一難は去ったといえども、資金が少なく人材不足に悩む中小薬局は、未だ厳しい状況に置かれているといえるでしょう。

2. 今後調剤薬局が直面する経営リスクとは?

コロナ感染の鎮静化により倒産件数は減ったものの、すでに成熟したと言われている調剤薬局業界では、今後中小薬局の淘汰が始まると予想されています。ここでは、今後の調剤薬局経営におけるリスクを確認しておきましょう。

2-1. 大手薬局チェーンのシェア拡大

中小薬局が経営に苦しんだコロナ禍でも、大手ドラッグストアは調剤薬局を併設しながら店舗数を拡大しました。大手ドラッグストアはさまざまな商品が揃うので地域住民にとって利便性が高く、資金力もあるため薬剤師の採用にも積極的です。このため、中小薬局よりも処方箋獲得・薬剤師確保で有利な状況にあります。

大手ドラッグストアは新規出店だけでなく、M&Aによる買収も盛んです。複数店舗を経営する中規模薬局では、1店舗のみを残し、その他の店舗を売却するというケースも見られます。

中小薬局にとっても、M&Aは経営難や後継者不足といった問題を解決する手段の1つとなっています。安定した事業を継続するために、M&Aによる事業譲渡を余儀なくされる中小薬局は少なくありません。

2-2. 門前薬局に依存した経営

全国で6万軒を超える調剤薬局の大部分を占めるのが、病院やクリニックの近隣にある門前薬局です。しかし、2022年度(令和4年度)調剤報酬改定では、対物業務の評価は実質的な引き下げとなり、処方箋調剤を行うだけでは十分な利益を確保することが難しくなっています。

厚生労働省は「患者のための薬局ビジョン」(2015年)において、すべての薬局をかかりつけ薬局にすることを目標として掲げました。かかりつけ薬局化が進むと、「24時間対応してくれる」「相談しやすい薬剤師がいる」など、立地以外の基準を重視する患者さんも増えるでしょう。「医療機関に近い薬局」という特徴だけでは、他の薬局との差別化が難しくなります。

調剤薬局が生き残るためには、薬局の立地を見直し、地域との関係を強化する必要があります。「処方箋の受け渡し」に留まらず、「地域住民の健康ステーション」として、主体的に地域と関わりを持つ薬局をめざしましょう。

2-3. 慢性的な薬剤師不足

薬局業界では、薬剤師が慢性的に不足しています。特に、地方郊外や離島といった都心部以外の場所における薬剤師不足は深刻です。また、大手薬局チェーンへの就職を希望する薬剤師が多く、個人薬局や中小薬局ほど人材獲得が厳しい状況にあります。

薬剤師が不足していると、在宅対応・24時間対応の体制が整備できず、かかりつけ薬局や地域連携薬局の取得が難しくなります。調剤報酬の加算も取りにくく、薬局経営が厳しくなるでしょう。

薬剤師不足を解消するには、薬剤師が「この薬局で働きたい」と思える労働条件を提供する必要があります。ICTの活用、スキルアップ支援など、可能な範囲で待遇改善に取り組むことが大切です。

 

3. 調剤薬局が生き残るための施策

コロナ禍や高齢化を受けて、患者さんの医療ニーズは変化しています。一時期は出店するだけで儲かるとも言われた調剤薬局ですが、今後は患者さんの期待に応えたサービスを提供しなければ、利益を確保することは難しいでしょう。

調剤薬局に求められるサービスが多様化している今こそ、薬局の経営方針を見直す時期です。ここでは、今後の薬局に必要な施策をお伝えします。

3-1. 在宅対応・24時間対応体制の整備

ポスト2025年に向けて政府は在宅医療の整備を進めており、薬局にも地域包括ケアの一員としての活躍が期待されています。在宅対応・24時間対応は、かかりつけ薬の条件でもあるため、薬局が取るべき施策の最優先事項と言えます。

在宅医療における薬局・薬剤師の役割

  • 医薬品・衛生材料の提供
  • 患者の状態に応じた調剤
  • 服薬指導・支援
  • 服薬状況と副作用のモニタリング
  • 残薬管理
  • 医師への処方提案・フィードバック
  • ケアマネジャーなど多職種との情報共有

在宅患者さんは、夜間や休日に体調が急変することもあるので、24時間体制を整備しておきましょう。医療機関の連絡先リストを作成したり、解熱剤や鎮痛剤を予め用意したりと、準備を整えておくと緊急時でもスムーズに動けます。

今後は末期がんなど複雑な症状を抱える在宅患者さんも増えるため、麻薬調剤や無菌調製への対応にも積極的に取り組みましょう。地域のニーズを汲み取り、求められる医療サービスを提供することが大切です。

3-2. 医療機関や関連施設との連携体制構築

在宅医療では、医師や訪問看護師、ケアマネジャー、歯科医師といった多職種との連携が重要です。特に、在宅患者さんのほとんどは医療機関からの紹介であるため、医師との信頼関係の構築は在宅薬局に欠かせない要素となります。

多職種との連携体制を構築する方法

  • 医療機関や地域包括支援センターなどに営業活動へ行く
  • 医療機関の開催するカンファレンスに参加する
  • 多職種連携会議・地域ケア会議・共同勉強会などに参加する
  • 日頃から患者さんの情報をこまめに提供する

在宅医療へ参入するための第一歩として、営業活動や会議への参加を通し、薬局の存在を知ってもらいましょう。薬局のPRをまとめたパンフレットやチラシなどを作成して、配布するのもおすすめです。

薬剤師には高い薬学知識はもちろん、多職種と信頼関係を築くためのコミュニケーション能力も求められます。異なる専門を持つ人同士がお互いを認め合うのは簡単なことではありませんが、理解を示しながら上手に連携を図ることが大切です。

3-3. オンライン服薬指導をはじめとするICTの導入

新型コロナウイルスの影響を受けて、薬局ではICTの導入が急速に進んでいます。限られた薬剤師の数で効率よく在宅業務を進めるためにも、ICTを活用して薬局DXを進めましょう。

薬局におけるICT化の例

オンライン服薬指導

パソコンやスマートフォンなどの情報通信機器を用いて、画面越しに服薬指導を実施すること。オンライン診療と組み合わせれば、患者は診療から薬の受け取りまでをオンラインで完結できる。

電子処方箋

処方箋を電子化し、デジタルデータによって運用する仕組みのこと。複数の医療機関からの処方を一元的に管理できる。

報告書作成システム

在宅訪問における報告書作成業務を効率化し、クラウド上で報告書のやり取りを行うシステム。

電子お薬手帳

紙のお薬手帳の情報をデータ化し、クラウド上で保管するお薬手帳

電子薬歴

患者の処方歴、副作用歴、服薬状況などの情報を電子データで記録し、患者情報を一元的に管理するシステム

調剤予約システム

処方箋をインターネット上で受け付け、患者が予約した時間に薬の受け取りができるシステム

自宅にいながら服薬指導から薬の受け取りまでを行えるオンライン服薬指導は、医療過疎地に住む高齢者や多忙な子育て世代・勤労世代にとって、非常に便利なサービスです。在宅医療の需要拡大に伴い、オンライン診療・オンライン服薬指導にもますます注目が集まりそうです。

オンライン服薬指導では、条件を満たせばリモートワークも可能なため、薬剤師の多様な働き方を実現する手段にもなります。リモート薬剤師の採用によって、人材不足解消も期待できるでしょう。

在宅訪問の効率化には、報告書作成システムの導入がおすすめです。「KIRARI PRIME サービス」では、クラウド型報告書管理システム「ファムケア」を提供しています。外出先で報告書の作成・送信ができ、リアルタイムな情報共有が行えるので、在宅業務の効率化・連携強化に役立てていただけます。

3-3. オンライン服薬指導をはじめとするICTの導入

新型コロナウイルスの影響を受けて、薬局ではICTの導入が急速に進んでいます。限られた薬剤師の数で効率よく在宅業務を進めるためにも、ICTを活用して薬局DXを進めましょう。

薬局におけるICT化の例

オンライン服薬指導

パソコンやスマートフォンなどの情報通信機器を用いて、画面越しに服薬指導を実施すること。オンライン診療と組み合わせれば、患者は診療から薬の受け取りまでをオンラインで完結できる。

電子処方箋

処方箋を電子化し、デジタルデータによって運用する仕組みのこと。複数の医療機関からの処方を一元的に管理できる。

報告書作成システム

在宅訪問における報告書作成業務を効率化し、クラウド上で報告書のやり取りを行うシステム。

電子お薬手帳

紙のお薬手帳の情報をデータ化し、クラウド上で保管するお薬手帳

電子薬歴

患者の処方歴、副作用歴、服薬状況などの情報を電子データで記録し、患者情報を一元的に管理するシステム

調剤予約システム

処方箋をインターネット上で受け付け、患者が予約した時間に薬の受け取りができるシステム

自宅にいながら服薬指導から薬の受け取りまでを行えるオンライン服薬指導は、医療過疎地に住む高齢者や多忙な子育て世代・勤労世代にとって、非常に便利なサービスです。在宅医療の需要拡大に伴い、オンライン診療・オンライン服薬指導にもますます注目が集まりそうです。

オンライン服薬指導では、条件を満たせばリモートワークも可能なため、薬剤師の多様な働き方を実現する手段にもなります。リモート薬剤師の採用によって、人材不足解消も期待できるでしょう。

在宅訪問の効率化には、報告書作成システムの導入がおすすめです。「KIRARI PRIME サービス」では、クラウド型報告書管理システム「ファムケア」を提供しています。外出先で報告書の作成・送信ができ、リアルタイムな情報共有が行えるので、在宅業務の効率化・連携強化に役立てていただけます。

3-4. 健康サポート機能の強化

かかりつけ薬局機能に加えて健康サポート機能を持つ薬局は、一定の要件を満たせば「健康サポート薬局」として認められます。健康サポート薬局では、薬以外の健康にまつわるあらゆる相談を受け付け、地域住民の健康維持・増進の促進をサポートします。

薬局の健康サポート機能の例

  • 地域における医療機関との連携体制の構築
  • 利用者のプライバシーに配慮した相談窓口の設置
  • 一般用医薬品や健康食品、サプリメント、介護用品のアドバイス
  • 土日の一定時間の開局
  • 地域ニーズに応じた健康イベントの実施

健康相談会を実施したり、患者さん一人ひとりの相談に親身に応じたりする中で、薬局のファンを増やすことができます。地域との関係性が強まり、競合するかかりつけ薬局との差別化が図れるでしょう。

3-5. 地域連携薬局・専門医療機関連携薬局の認定取得

2021年8月、薬機法改正を受けて、「地域連携薬局」と「専門医療連携薬局」の薬局認定制度がスタートしました。

・地域連携薬局

地域連携薬局は、かかりつけ機能に対応した認定制度。在宅医療への移行がスムーズに行えるよう、地域の医療機関と連携を取りつつ、患者さんの療養をサポートします。

・専門医療機関連携薬局

専門医療機関連携薬局は、「患者のための薬局ビジョン」の「高度薬学管理機能」に対応する薬局認定制度。がん等の専門的な薬学管理が必要な患者さんをサポートするため、専門医療機関との連携を取り、より高度な薬学管理や特殊調剤に対応します。

地域連携薬局には、かかりつけ機能に加えて、無菌調製や麻薬調剤などが要件となります。健康サポート薬局と混同されやすいものの、「予防の段階から健康の維持・増進をサポートする」のが健康サポート薬局、「病気になったあとも地域で安心して医療を受けるためのサポートをする」のが地域連携薬局です。どちらもお互いに役割を補完しながら、地域住民の安全な医療を支えています。

令和5年9月時点における全国の認定薬局数は、地域連携薬局が3,909件、専門医療機関連携薬局が170件となっています。専門医療機関連携薬局はまだまだ少ないのが現状ですが、今後、在宅医療を受ける患者さんも多様化が進むにつれて需要も増していくでしょう。

まとめ

2021年まではコロナ禍の影響により調剤薬局の倒産が相次いだものの、2022年度には前年度比約35%にまで減少しました。しかし、薬局を取り巻く環境は大きく変化しており、処方箋調剤だけでは安定した薬局経営を続けることが難しい状況です。

薬局が生き残るには、対物業務から対人業務への移行を進めるため、在宅訪問や健康サポート機能の拡充化を図る必要があります。同時に、ICTを活用して業務効率化・多職種連携を進めることも大切です。地域連携薬局や専門医療機関連携薬局の認定を受け、薬局としての強みを持つことも検討しましょう。

HYUGA PRIMARY CARE株式会社の「KIRARI PRIME サービス」は、薬局の在宅訪問経営をサポートするサブスク型在宅支援サービスです。在宅医療への参入から施設営業、患者獲得、薬剤師育成まで、在宅薬局にまつわるさまざまな問題をサポートしています。在宅訪問にお困りの薬局経営者の方は、ぜひKIRARI PRIME サービスにご相談ください。

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監修薬剤師:原 敦子
HYUGA PRIMARY CARE株式会社
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