在宅医療が注目されているのはなぜ?

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在宅医療が注目されているのはなぜ?

在宅医療の注目度は年々増加している傾向にあります。「在宅医療を行っています」と掲示されている薬局を見かける機会が以前よりも増えたと感じている方も多いでしょう。
実際に、在宅医療を受けている患者さんの数は急激に増加しています。

なぜここまで在宅医療が注目されるようになったのでしょうか。
今回は、在宅医療が注目を集めるようになった背景や患者数の推移などを詳しく紹介します。

目次

在宅医療が注目されている理由・背景

在宅医療が注目されるようになったのは、高齢者の割合が増加していることが大きな理由です。
2012年の統計では、65歳以上の高齢者は3,058万人でした。それが2015年には3,395万人まで増加しています。
増加はとどまるところを知らず、2055年には3,626万人になる見込みです。

人口の約40%が高齢者となる2055年、このままの医療体制を続けていては、高齢者のサポートを十分に行うことができません。
また、内閣府が公表している「65歳以上の認知症患者の推定者と推定有病率」によると、高齢者の有病率は2012年で15%(462万人)でしたが、2025年には20%(約600万人)となる見込みです。

このような状態が続くと、治療を受けようと思っても、足腰が悪く自分の力で医療機関に行けない方も増えてくるでしょう。
こういった状況を避けるためにも、在宅医療が有効です。
24時間体制で対応できる在宅医療を国が推進していることもあり、徐々に患者さんが増えています。

在宅医療を行えば医師や薬剤師、看護師などが自宅を直接訪れることになるため、患者さんに身体的な負担をかけることがありません。
患者さんが住み慣れた場所で医療サービスを受けられることも大きなメリットです。

高齢者の増加に伴って自宅で医療を受けられる体制を整える必要性が出てきてきたことから、在宅医療が注目を集めています。
また、自宅にいながら医療サービスを受けたいという需要が増したことも在宅医療が注目されるようになった要因の一つです。

在宅医療とは

在宅医療とは、病院や薬局へ自分で行くことが困難な患者さんの自宅を訪問し、医療を提供することです。
薬剤師だけでなく医師や歯科医師、看護師や理学療法士、栄養士など専門知識をもったさまざまなスタッフが協力して在宅医療を行います。在宅医療での薬剤師の役割は主に次のとおりです。

  • 処方せんに基づいた調剤 
  • 薬を患者さん宅へ届ける
  • 服薬指導
  • 薬歴管理
  • 副作用や効果のモニタリング
  • 残薬の調整
  • 医師や看護師、ケアマネジャーなどへの情報提供

通常の薬局業務と変わらないものもありますが、副作用や効果のモニタリングは在宅医療のほうがよりしっかりと行うことができます。
患者さんの自宅を訪問することで普段の生活スタイルが見えてくるため、効果や副作用を目で確認しやすいです。

在宅医療では、医師や看護師などへの情報提供も必要になります。
どのような薬剤をどのように服用しているのか、服用するときにわずらわしさを感じている様子はないか、そのほか気になったことはないかなどできるだけ詳細に情報を整理することが大切です。

一見すると薬剤師としての視点には関係ないような情報でも、ほかの医療スタッフからすれば大きな情報となることも少なくありません。多くのスタッフがチームとなって患者さんをサポートしていく在宅医療では、細かな観察と情報提供が必要になります。

在宅医療を必要とする患者は何を求めてる?

在宅医療で患者さんが求めていることとしては、次のものが考えられるでしょう。

  • 重複投与や相互作用のリスクを下げる
  • 視覚や嚥下機能が低下しても問題なく服用できる
  • 服用している薬に対して理解を深められる
  • 自分のライフスタイルに合わせた服用ができる
  • 飲み忘れを防げる

在宅医療を受けている患者さんのほとんどが高齢者のため、薬を正しく飲めることやムリなく服用を続けられることなどが求められる傾向にあります。実際に在宅医療では重複投与や飲み忘れなどが問題となることが多いものです。

一人では難しかったことが薬剤師の介入によりスムーズに行えるようになることが求められているといえるでしょう。

患者の増加推移は?

平成8年では、在宅医療を受けた患者数は7万2,300人でした。これが平成29年には18万100人にまで増加しています。
平成17年ごろまで患者数は横ばいでしたが、平成20年から急激に伸びを見せました。患者さんのうち約90%は75歳以上の高齢者です。

今後の想定は?

今後も在宅医療を受ける患者数は増加していくと想定されます。なぜなら、2025年問題が目前に迫っているからです。
2025年問題とは、ベビーブーム世代に生まれた団塊世代の方が75歳以上の後期高齢者になることにより、医療費が圧迫されることをいいます。

後期高齢者はいくつもの疾患を抱え込むことが多くなるため、在宅医療の必要性も高まると考えられるでしょう。
2025年以降も高齢者の割合が増えていくと想定されていることから、在宅医療を受ける患者数は増加していくことが予想されます。

在宅医療を進めるには?

在宅医療が広まってきているとはいえ、存在を知らない方もまだまだいるものです。
ムリに通院したり家族に手伝いをお願いしたりしている方も多いでしょう。在宅医療を進めるためには、まず存在を知ってもらう必要があります。
そのうえで、在宅医療を受けるメリットやデメリットをしっかりと理解してもらわなければなりません。

そのためには、薬局に在宅医療に関する掲示物を貼ったり、薬剤師から患者さんへ「在宅医療を受けてみませんか?」とお声がけをする機会を増やしたりすることが大切です。
在宅医療は医師からの勧めがきっかけで始める方が多くを占めています。
残念ながら薬剤師からの声かけで始める方は多くはありません。

そして在宅医療を進めるにあたり薬剤師の人員を確保するなど薬局側の負担も考慮しなければいけません。
高齢者が自宅で満足のいく医療サービスを受けられる社会を作るためにも、積極的なお声がけが必要です。

まとめ

在宅医療が注目されているのは、高齢者の割合が増加しているためです。
高齢になると何かしらの疾患を抱えている方が多くなるため、医療の介入が必要となります。
しかし、住み慣れた場所で毎日を過ごしたいと考えている方は少なくありません。

そこで活躍するのが在宅医療です。在宅医療を受ければ自宅にいながら医師や看護師、薬剤師などからのケアを受けられます。
薬剤師は患者さんが負担なく服用できる環境を整え、ライフスタイルに馴染んだ治療を提供できるよう努めることが大切です。
2025年には団塊世代が後期高齢者になることもあり、より在宅医療のニーズが高まっていくと考えらるでしょう。

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監修薬剤師:原 敦子
HYUGA PRIMARY CARE株式会社
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